『ゼロ・モステルが大好きで。』

はい。『過渡期ナイト』レーベルオーナーの死紺亭柳竹です。

どうでもいいけど、ジャニーズ事務所が手がけるというメル・ブルックス原作の『プロデューサーズ』は大丈夫かな。”大丈夫かな”というのも微妙な表現だが。

私の心配事はプロデューサー役の井ノ原快彦さんが太っていないという厳然たる事実である。これは原作ファンとしては見逃せないポイントだ。太れ、井ノ原くん! いますぐ花田家の婿養子になってみたらどうだ(誰の婿になるんだ、今更)。なんて、そっちのほうが、更に激ヤセしそうなのはわかっているのだが。

メル・ブルックスの映画処女作『プロデューサーズ』は完璧な喜劇だ。そして、その完璧な喜劇を、これでもかと印象づけたのは名優ゼロ・モステルなのである。

ゼロ・モステルは、愛すべき太っちょ。舞台デビューの日に看板に”ゼロ”という字を見つけて、彼が「あの役者は誰だ?」と聴いたら、「お前だよ。」と言われたとか。ま、名付けなんていうのは、そんなものかも知れない。

彼はアカ狩りの災難にあって、長く不遇の時代を過ごした。その果てに辿り着いたのが『屋根の上のバイオリン弾き』の主役の当たり役だったのである。

彼が晩年に出た『ウッディ・アレンのフロント』はアカ狩りに興味のあるひとならば、必見だ。ぼくは、この映画のゼロ・モステルの役どころの仲間を失った男の自殺するシーンが、とても美しいと思う。
この映画を見ると、ウッディ・アレンは、皮肉を込めて、幸福な時代のアメリカを映す、幸福な喜劇人だと思う。

そう、喜劇は時代を映す鏡だ。9・11のそのときブロードウェイで上演中だった芝居の一本が『プロデューサーズ』で、いまだにロングランを続けている。
ジャニーズ事務所は、たぶん”ロングラン”というところだけ見て、この芝居を輸入しているのが見え見えな気がする。だって、日本の文脈で、アチャラのショービズの話が笑える訳がないもんな。

何処の世界でも非政治性は深刻だってことか。芸能の世界ですら、いや、芸能の世界だからこそね。

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それでは、失礼します。