『素晴らしい無駄な抵抗としての読書。』

さて、読書とは当然のこと「時間芸術」である。以下、死紺亭柳竹の書評である。


はい。
2004年6月30日、思潮社より、小笠原鳥類氏の第一詩集『素晴らしい海岸生物の観察』が発刊されました。

古い友だちだから、というのもありますが、「ある理由」から、著者本人から、ご恵投頂きました。
その「ある理由」は、サイゴに♪

まず、詩集冒頭の「(私は絵を描いていただけだ。/船に遠隔操作の時間差爆弾を仕掛けていたのではない)」というタイトルのポエム。

っていうか、なんというタイトルだ☆
タダモンじゃないね、絶対。タイトルがすでにパンチラインと化してますな。

実は、小笠原鳥類くんには、2002年の5月25日のいまは亡き高田馬場ボストンでの「過渡期ナイト」に出演して貰っているんだよね。

もちろんリーディングでさ。で、俺が、死紺亭人類として、鳥類にツッコミを入れるという。そのたびに、ボストン名物だった黒板に、鳥類くんが、解説を書いて、そのたんびに大ウケという、ちょっと忘れらない「現代詩朗読」でした☆

で、その冒頭の詩に、「爆発計画」と書いて「レストラン」とルビを振っている個所があって。
こういう笑いのセンスはすごいと思うんだよね。
ルビの効果を最大限に使っている、という。

死紺亭のビート・コメディ「ブロッディ・バレンタイン・ディ(B.V.D)」に、「清水ケンタウロス失恋レストラン/オーダーするシチューに浮んでは消える/覚醒剤でとろかした骨」という諧謔のフレーズがあるんですが、それよりもラジカルかも知れない。簡潔なぶんだけ。

前述の「過渡期ナイト」で朗読してもらった「腐敗水族館」や「怨念が鬱積する」、また「鬱積、緑色ゼリー水槽」なども、この小笠原鳥類の第一詩集に掲載されていますが、作者本人とも、話したんだけれど、実はこれらの詩篇は笑いながら読まれるべき作品なんだよね。

実際、「過渡期ナイト」でも、爆笑の渦だったし。

「怨念が鬱積する」のなかの詩句「紫色の鋭い、あざやかな線が画像に、次々に健康に出現し、いろいろなことがわかると思った。」って言う個所も、ホントにツッコムとオモシロイっしょ。
「何を、勝手に、分かっとんねん!」みたいなね。

そこらへんが、入沢康夫氏が帯文で、「いわゆる『シュルレアリスティックな単調さ』の陥穽を巧みにすり抜け」ると評言する、この詩人の上質なユーモアのセンスだと思いますよ。

「健康」というタームも、以前、小笠原くんと直接話したんだけどさ。現代詩って、ま、いろんな次元で「病気」に傾斜しがちじゃない。それってよくないね、ってふたりで意気投合して。

これからの現代詩は「生き生き健康体操だっ!」と、よく分からない盛り上がりをしたのを覚えています。

この詩集の末尾を飾る詩作品「動物論集積 鳥」も必読。

ノスタルジーを含めて、この詩人の良質な部分、そして動物への、決して一筋縄で行かない愛情が、怨念が、鬱積するのが、圧巻です。

もちろん読者は「爆笑」すべきですよ、「健康」にね☆

さて、サイショに言った、ぼくがこの本をもらった「ある理由」ですが。

2002年の9月8日に「過渡期ナイト」レーベルが発刊したミニコミ「過渡期之友」(ALL SOLD OUT!)に、鳥類くんのレタリングのセンスと彼自身の「素晴らしい無駄な抵抗」という詩句のあまりの爽快な馬鹿馬鹿しさに感服して、そのフレーズを直筆で掲載させてもらったのね。

そん時のふたりのノリが、鳥類くんのなかに残っていて、この第一詩集「素晴らしい海岸生物の観察」に採用されたそうだ。本人から、聞きました。

ちょっとだけ、誇らしいって、こういうことかな♪
ほんとに、ちょっとだけよ♪ これが「ある理由」。

この掲示板を、いつも読んでくれている鳥類くんへ、アリガトウ☆ サンクス・メッセージ・フロム・死紺亭でした!

以上が再録である。
ここまで高度に時間が交錯する文章の初出を記すことは不可能である。
どうしても知りたい貴方は、世の中でいちばん安全な掲示板「過渡期ナイトBBS@暫定版」まで。こちらである。
http://free2.milkypal.net/f-bbs/BA-1/freedom.cgi?mm=k_night&mode=bk

本を読む馬鹿、読まぬ馬鹿、兎角この世は住み辛い、と夏目坂では口笛を吹いてみる。
では、諸君、また会おう!